『人生らくらくカウンセリング』連載〈22〉「あなたは既にDV被害を受けている!? DV・ストーカー被害から逃れるには②」


人生らくらくカウンセリング

前回までのカウンセリング内容】

 1歳のお子さんのいる女性が、夫から日常的にひどく怒鳴られたり脅されたりしているということで来談した。カウンセラーは、実際に殴られるような身体的な暴力は受けていなくても恐怖を感じるような言動でパートナーから脅されている場合、それはDVにあたると説明した。そして、パートナーの感情が突然キレてしまった場合の間合いの取り方や、この女性と同じようなDV被害を受けている人が集まる自助グループへ参加することをアドバイスした。

今回のカウンセリング

室長 前回のカウンセリングから何か変化がありましたか?
相談者のアイコン2 参加をすすめられたDV被害者の自助グループに行ってみました。
 びっくりしました! 私と同じような経験をしてきた方があんなにたくさんいらっしゃって、そのことを大勢の前でみなさん堂々とお話なさっているので。
室長 そういう経験談を聞いて、どんなことを感じましたか?
相談者のアイコン2 なんだかとってもホッとしたんです。こういう問題でつらい思いをしていたのは、自分だけじゃないんだとわかって。
 それに、前回のカウンセリングで心理的に脅されるのもDVだとうかがってはいたんですけれど、それでも私はケガをするほど暴力を振るわれるような場合だけしかDVとはいえない、私のされていることはたいした問題じゃないとしか思えなかったんです。でも、グループに参加していた方たちの中には、殴られたりしていたわけではなくても、いろいろな形で夫や恋人からひどい目に遭わされて苦しんでいる方もかなりいらっしゃいました。そういう方たちのお話をうかがっていると、私も子どももずいぶん夫から恐ろしいことをされてきたんだと感じるようになってきたんです。
室長 自助グループに参加できて、本当によかったですね。あなたはご自分が受けてきた被害を、自助グループの仲間のおかげで正しく認められるようになれたんです。専門家の説明よりも、実際におなじような経験を持っている人の話を聞く方がずっと納得がいくんですよ。
  そのグループのミーティングの中では、ご自分でも話をされましたか?
相談者のアイコン2 はい。少しだけですけれど。ミーティングが始まる前に、話したくなければ無理に話さなくてもいい、他の参加者の話を聞いているだけでもいいと言われていたので、逆に気が楽になっていて話せたのかもしれません。
室長 ご自分の話をしてみて、どんなことを感じましたか?
相談者のアイコン2 すごく気持ちが楽になりました。他の方たちは何か特別なアドバイスをしてくれたわけではないんですけれど、とにかく私の話をよく聞いてくださっているのはわかりました。
 自分の夫婦関係のことは、今までも友達に相談したり夫婦問題の相談ダイヤルなどに電話してみたりもしていたんです。でも、あまりよく話も聞いてもらえないうちに、的外れだったり上から目線だったりするアドバイスばかりされていたので、こんなにしっかり自分の話が受け止めてもらえている感じがしたのは初めてでした。
 こういう言い方は失礼かもしれませんけれど、前回のカウンセリングは話を聞いてもらえて安心したというよりは、自分が夫からされていたことがDVだなんて言われてびっくりするばかりでしたし。
室長 ははは。別に失礼なことはありませんよ。カウンセラーは、お話をしっかり聞くだけでなく、相談に来られた方が問題を解決していきやすくするために、今までと違うものの見方や考え方にも気づいてもらうようにするのも仕事ですから。
 ただ、共感を持って話を聞く力は、同じ問題を持つ当事者同士の方が大きいのは確かです。
 カウンセラーと自助グループは役割が違いますから、私は自助グループも利用した方がよさそうな方には、カウンセリングと並行して通っていただくことをおすすめしています。
 では、自助グループにはしばらく定期的に通い続けてくださいね。

 さて、気になるお連れ合いのご様子はいかがですか?

相談者のアイコン2 前回アドバイスをいただいた通り、夫がキレ始めた時は、
「子どもが寝ているかどうか、まず子どもの様子を見させてください。それからあなたの話は聞きます。でも、子どもが目を覚まさないようにあまり大きな声や音は出さないようにしてください。」
と、頼むようにしてみました。
 夫はイライラした様子でしたけれど、子どものことを言われたのでがまんしてしばらく待ってくれました。その後は、私の家事の中での小さな失敗のことで長時間お説教されて、へとへとになってしまいましたけれど。でも、夫も子どもに少しは気を使ったのか、いつものように大声で怒鳴ったり何かを投げつけたりすることはなかったので、その晩は安心して眠ることができました。
 夫がイライラしている時の間合いの取り方を教えていただいて、本当に助かりました。ありがとうございます。この調子で夫も落ち着いて話ができるようになってくれれば、うちも平和な家庭になりますね。
室長 う~ん。水を差すようなことを言って申し訳ないんですが、安心しきってしまうのはちょっと危険なんですよね。
相談者のアイコン2 え!?
室長 DV夫の改心や行動改善というのは、できるとしても相当時間をかけてカウンセリングなどを受けていかないと難しいものなんです。一時的に暴力が収まっていたり、反省や謝罪のことばや暴力は振るわないという約束をしたりというのは、あまり当てにならないんですよ。むしろ、暴力行為を抑え込んでいる間にイライラが溜まっていって、何かの拍子にそれが爆発してもっと暴力がエスカレートする場合も多いんです。
 そういう経験を、自助グループで他のDV被害者の方が話していませんでしたか?
相談者のアイコン2 そういえば、もう殴らないという約束を何度もされてはその約束を破られたという話をされていた方がいらっしゃいました…。
 …で、でも、それじゃあ、間合いの取り方を教えてもらっても何もならないじゃないですか!?
室長 いやいや。今の時点では。まずあなたやお子さんが日常的に被害を受けないように応急処置としては、前回のアドバイスは必要だったんですよ。それに、もしこれだけでお連れ合いのDVが収まってくれるなら、それに越したことはないですし。
 ただ、今後も危険なことが起きる可能性は小さくないので、それには備えておかないといけません。
相談者のアイコン2 で…でも、どうすれば…?
室長 お子さんがいない、あなたとお連れ合いが2人だけになるような時が怖いですね。お子さんは保育園に預けたりしているんですか?
相談者のアイコン2 はい。ちょっと前から預けられる場所が見つかって、私もパートの仕事に出られるようになりました。ただ、私が子どもを預けてパートに出ている時間帯は夫も会社ですから、めったに私と夫2人だけで家にいるということにはなりませんけれど。
室長 そうですか。だからといって完全に安心はできませんね。何も問題が起きなければそれが一番ですし、実際に何が起きるかも予測はつきません。ただ、備えはしておきましょう。
 何か起きたら、すぐに私のところにメールか電話をしてください。ただ、私は個人営業のカウンセラーですから24時間対応はできません。DV関連の緊急相談電話の窓口一覧をお渡ししておきますから、私とすぐに連絡がつかないような時には、こういった窓口にすぐ電話してください。
相談者のアイコン2 ありがとうございます。

―それから数日後、次回のカウンセリングの予約日前に、この女性からなるべく早く話を聞いてほしいというメールが入った。カウンセラーは、予約日時を変更して緊急のカウンセリングを行うことも考えた。そして、まず彼女の携帯に電話を入れた―

室長 どうされましたか?
相談者のアイコン2 こわい! すごくこわいです!! 私も子どもも殺されるかもしれないんです!!

〈つづく〉

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☆心理相談室サウダージは、高円寺庚申通りで「家族問題(虐待、AC、DVなど)、お子様の問題(不登校、ひきこもり、発達障害、成績不振など)、アルコー ル・ギャンブルほかの依存症、摂食障害、職場・友人・恋愛などの人間関係の悩み、トラウマ、自傷行為、生きづらさなどの悩み」といった幅広いご相談を受けています。

☆心理相談室サウダージでは、毎週火曜日の夜、ひきこもり・不登校・対人緊張を感じるなどの当事者のグループ・カウンセリングを行っています。

詳しくは、相談室のウェブサイトをご覧ください。


※本記事は「HAPPY!高円寺」連載記事『心理相談室サウダージの人生らくらくカウンセリング』をバックナンバーを含め公開(毎月10日頃更新)したものです。


著者について

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