『人生らくらくカウンセリング』連載〈15〉


本記事は「HAPPY!高円寺」連載中(2012年7月号、vol.33より)の人気記事『心理相談室サウダージの人生らくらくカウンセリング』をバックナンバーを含め公開(毎月10日頃更新)したものです。

心理相談室サウダージは、高円寺庚申通りで「家族問題(虐待、AC、DVなど)、お子様の問題(不登校、ひきこもり、発達障害、成績不振など)、アルコー ル・ギャンブルほかの依存症、摂食障害、職場・友人・恋愛などの人間関係の悩み、トラウマ、自傷行為、生きづらさなどの悩み」といった幅広いご相談を受けています。

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人生らくらくカウンセリング

連載〈15〉「どうする!? うちの子のひきこもり」①

 

相談者のアイコン 「うちの息子が就活に失敗した後、ずっと自分の部屋に閉じこもっているんです。」

室長のアイコン「もう少し詳しい様子を聞かせてください。まったく家や部屋の外に出なくなってしまったんでしょうか?」

相談者のアイコン「一昨年の就活で100社ぐらいエントリーシートを出して、毎日毎日、何か月も面接を受け続けていたのに、けっきょくどこの会社からも内定がもらえませんでした。
しかたなく、大学は卒業せずに籍を残したまま就職浪人になりました。でも、浪人しての就活はますます難しいようで、帰宅するとふさぎこんだりイライラしたりした様子で、夕飯も食べずに自分の部屋に行ってそのまま寝てしまうようになりました。そのうち朝も起きてこなくなり、就活に出かけるどころか部屋にカギをかけて閉じこもり出てこなくなってしまったんです。」

室長のアイコン「食事やお風呂はどうしてますか?」

相談者のアイコン「食事は、息子の部屋のドアのあたりに置いておくようにしています。後で見に行くと、食べ終えた食器がドアの外に出ています。それから、夜中にキッチンから物音が聞こえて、翌朝冷蔵庫の中を見ると食べ物がなくなっているようなこともよくあります。
お風呂も、夜中にシャワーの音が聞こえてきますから、入ってはいるようです。」

室長のアイコン「最近、息子さんと顔を合わせることはないのですか?」

相談者のアイコン「息子がトイレを使う時ぐらいです。でも、顔を合わせても会話ができるような雰囲気ではないんです。」

室長のアイコン「息子さんが部屋の中で何をしているか、多少はわかりますか?」

相談者のアイコン「日中は眠っているのか、部屋の外まで聞こえるような物音などはしません。でも、夜中になると、テレビの音なのかひとりごとを言っているのかわかりませんけれど、ぶつぶつと声が聞こえることがあります。それから、最近何度か、ガシャーンというような大きな音が聞こえることもありました。
イライラして何か壊したのかもしれません。とても心配なんです。」

室長のアイコン「それはご心配でしょうね。このまま何の手も打たずにいては、事態は悪化するばかりでした。よく相談に来てくださいました。」

相談者のアイコン「でも、親がカウンセリングに来たって、ひきこもりは本人の問題なんですから、本人も連れてこないとどうしようもないですよね。」

室長のアイコン「いえいえ、そんなことはまったくありませんよ。息子さんのようにひきこもり状態になっている人が、すぐに出てこられるわけがありません。それに、無理やり引っ張り出そうとすれば、反発する息子さんとご家族の閒で暴力沙汰になる危険もあります。
まずご家族が相談に来てくださって周囲の環境を変えていければ、ひきこもりの息子さんも出てきやすくなってきます。それから、問題を抱えているのは息子さんだけではないという考え方もしてみましょう。息子さんのひきこもり問題で困っているのは、息子さんご本人だけではないですよ。あなたもたいへん心配でお困りですよね。」

相談者のアイコン「たしかにそうですが…。」

室長のアイコン「カウンセリングにいらっしゃるのは、息子さんのためではなくあなた自身のためだと考えるようにしてみてください。」

相談者のアイコン「そんなふうに自分のことばかり考えるなんてわがままじゃないんでしょうか。息子があんなに大変なことになっているのに…。」

室長のアイコン「まずあなたが楽になることが、結果的に息子さんの問題解決につながるんです。今、きっとお宅の家の中は緊張感でいっぱいの雰囲気になっているんじゃないでしょうか?」

相談者のアイコン「それは感じます。このまま息子がひきこもっていると、そのうち何かとんでもないことをしでかすんじゃないかといつもハラハラしていて、息子の感情を変に刺激することはしないよう、いつも気持ちが張り詰めています。」

室長のアイコン「そんなにピリピリした空気のところには、息子さんも出てきにくいでしょう。カウンセリングであなたの気持ちが多少楽になれば、家の中の緊張感もやわらいで、息子さんもご家族のいるところに出てきやすくなりますよ。
ところで、お宅のご家族はあなたと息子さんと…?」

相談者のアイコン「あとは夫の3人家族です。」

室長のアイコン「今日はお連れ合いはなぜいらっしゃらなかったのですか?」

相談者のアイコン「今日だけでなく、毎日仕事がとても忙しいんです。帰りも夜遅くですし、休日出勤することも多いです。」

室長のアイコン「息子さんがどこの学校に通ってきたか、教えてもらえますか。」

相談者のアイコン「中高一貫のA学園からB大経済学部に進学しました。」

室長のアイコン「どちらも偏差値がすごく高い学校ですね。就職を望んでいた会社の名前も、いくつか教えていただけますか。」

相談者のアイコン「C社、D社、E社、F社あたりに、一番行きたかったようです。」

室長のアイコン「誰でも名前を知っている大企業ばかりですね。しかし、銀行、コンピュータ企業、自動車メーカーにマスコミまで…、職種はバラバラですね。
次にあなたとお連れ合いの学歴、職歴も教えていただけますか。」

相談者のアイコン「主人はG大からH銀行に入行しました。私はI女子大から主人と同じH銀行に入り、そこで主人と知り合い結婚しました。」

室長のアイコン「お連れ合いの卒業されたG大は、息子さんのB大以上の高偏差値大学ですね。」

相談者のアイコン「主人ほどではないにせよ、息子もいい中高からいい大学に進学したので、きっと主人のようにいい会社に入ってくれると期待していたんですが…。」

室長のアイコン「お連れ合いは、息子さんにどのように接していますか。」

相談者のアイコン「主人は息子がひきこもるまでは、あれこれ就活のアドバイスをしたり、” 経済状況の厳しい今の日本で生き抜いていくには、なんとしても大きないい企業の正社員になるしかない!” と、息子を叱咤激励していました。
でも、息子が就活に失敗してひきこもりになってからは、どうしていいかわからなくなっているようです。息子は私たちと顔を合わせたり会話をするのを避けていますが、主人もたまに息子と顔を合わせても話しかけることもできなくなっています。」

室長のアイコン「ありがとうございます。なんとなくお宅の状況が見えてきました。
ところで、あなたは、お連れ合いや息子さんの通った学校を” いい学校” とおっしゃり、お連れ合いが働いている会社や息子さんが志望した会社を” いい会社” と表現していましたよね?」

相談者のアイコン「はい。でも、それが何か…?」

室長のアイコン「しかし私は、あなたが使った” いい学校” ” いい会社” という言い方を、” 偏差値の高い学校” ” 有名大企業” と言い換えて、会話をしていました。
どうしてかわかりますか?」

相談者のアイコン「さあ…?」

室長のアイコン「今すぐに答えを出せとは言いません。次の面接日までに考えてきてみてください。
それから、あなたはご自分の夫を” 主人” と呼んでいましたけれど、私は” お連れ合い” という表現にしていました。それがどうしてかも考えてきてみてください。
それと、もうひとつ課題を出しておきましょう。」

相談者のアイコン「その課題というのは何ですか?」

室長のアイコン「今日、このカウンセリング・ルームからはまっすぐ帰らず、この高円寺の街のあちこちに寄り道しながら帰ってください。」

相談者のアイコン「??」

室長のアイコン「うちの相談室は、高円寺庚申通り商店街の中にあります。まっすぐ高円寺駅に行かずに、庚申通りのいろいろなお店をのぞいたり、他の商店街にも足を伸ばしたり、近所の公園や神社やお寺などにも寄ってみたりしてみてください。古本屋に寄って気になった本を買い、落ち着けそうな喫茶店に入って一休みしながら読むのもいいですよ。買い物や飲食で寄り道するなら、日本中どこの街にでもあるチェーンのお店ではなく、できるだけこの街にしかない個人経営のお店に入ってみてくださいね。
そうそう。どこかでご家族へのおみやげもぜひ買って帰ってください。
そして、今日の寄り道の話は、次回ぜひ聞かせてください。」

相談者のアイコン「この課題と息子のひきこもり、何か関係があるんでしょうか?」

室長のアイコン「それは、実際に寄り道をしてみてから、ご自分で考えてみてください。
でも、きっと何かいい効果が出てくると思いますよ。」

(つづく)

 

☆心理相談室サウダージでは、「不登校・ひきこもり・ニート・対人緊張に悩む方のグループ・カウンセリング」を毎週火曜よる7時から開催しています。詳しくは、http://www.saudade.biz/ をご覧ください。


著者について

HAPPY!高円寺の編集スタッフです。このホームページのメンテナンスなども行っています。なお、掲載されているお店情報に誤りや変更点があれば、問い合わせフォームでお知らせください。新しいお店情報などをいただくと、なお嬉しいです。よろしくお願いいたします。