超近日中小説「銀座から高円寺まで」①夜のバス


やっぱり電車には間に合わなかったわ。もう0時半を過ぎちゃった。またバスだわね。

あら、あの子、またパソコン付けっぱなしだし、鍵もかけてないし・・・もう!

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良かった。何とか間に合ったわ。この深夜中距離バスっていうのは0:50が最終だけど、これなら銀座から荻窪まで帰れるんだから、多少すわり心地が悪かろうが、ありがたいのよね。

今日は金曜日だから、あんのじょう、けっこう人がいっぱいだわ・・・。

 

「・・・でさ、オリンピックがあったから、けっこう寝不足で疲れもたまってるんだよね。」

「また、来週の週末は、阿波おどりでクタクタになるんじゃない?!」

「ああ、今回もどっちにしたってもちろんおれは参加するよ!月曜日は、・・・なんとかなるさ(笑)。」

 

わたしのななめ前に座るサラリーマン二人が、かん高い声で高円寺阿波おどりのことを話している。わたしも毎年阿波おどりは観に行っているから、もちろん予定には入れているんだけど、こうして目の前で他人の口からワクワク感が伝わってくるのは、なんだか照れくさい・・・けどうれしかったり。

 

「四谷三丁目。次止まります。」

 

あ、さっきのサラリーマンの一人、四谷三丁目で降りたわ。へー、このあたりから毎年高円寺まで来てるのかしら?

そういえば、このあたりってもともと古き良き東京って感じも残っているわよね。お祭り好きが多いっていうのはこじつけかな?

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そろそろ、新中野か。ここからは、降りる人だけになるのよね。

(ブー)

ん?誰から?ああ、たけしからか。なに?

 

ねーちゃん、今から高円寺来れない?ねーちゃんのデパートで売ってるのよりもうまいワインとか鶏レバーのオリーブ漬けを特別におごるよ。純情商店街にある店だよ。

 

うっ!あいかわらずにくたらしい弟だわ。わたしの職場をちょっと馬鹿にしたふうでいて、じっさい、みごとにわたしの好みを突いてくること!

 

「次は新高円寺です。次、止まります。」

 

「・・・この前さ、グルーポンで買った高円寺のラーメン屋行ったらさ、なくなってたんだよね。」

「はっは、まだまだ高円寺通じゃないんとちゃいまっか?」

おっと、わたしが弟からのメールを読んでいるあいだにバスはもう東高円寺を過ぎてたわ。

年下の上司らしき男に、部下のおじさんが答えている。関西弁で聞く「高円寺通」の言葉に、おもわず耳が反応しちゃったわ。

あ、そろそろ新高円寺ね。うーん、金曜日だし降りるとするか!

深夜中距離バス


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